コラム
既存ビルの資産価値と個性を向上させるリデザインのポイント
◎既存ビルのリデザインとは

築古ビルでは、リノベーションによって価値を再生させるケースが多くあります。一般的にリノベーションとは、建物の機能を回復しつつ大規模な改修によって、機能やデザインを向上させる手法です。一方リデザインは、より洗練された空間をつくり、デザインの質を高めることに特化しています。全体のイメージを刷新する工事ではなく、既存の建物の個性をいかしながら、トレンドにあわせたデザインに変化させます。
どのような建物であっても、新築時は美しく最先端のデザインかもしれません。しかし、時間の経過とともに似たような雰囲気の建物が増えるため、かつての目新しさが失われてしまいます。建物自体はきれいであっても、個性が失われたりニーズに合わなくなると、建物の魅力が減り入居率が低下してしまうという問題が生じます。このようなビルを再生するために効果的なのが、既存の魅力をいかしつつ新たなデザインを加える、リデザインです。
リデザインでは、新しいコンセプトにもとづいたサイン計画の刷新や、無機質な空間をやわらげる植栽を配置するなどの方法が用いられます。リデザインを行うなら、ビルが新しく生まれ変わったという印象を与えることができ、ビルのバリューアップにつながります。リデザインによって建物の魅力が増すと、オフィスやテナントなどの空室を減らすだけでなく、既に入居しているテナントの満足度を高め、定着率の向上にも役立つでしょう。そのような魅力ある建物に生まれ変わることで、資産価値の持続的な向上にもつながります。建物のよい部分を活用しつつ新しい個性をつくりだすリデザインには、建て替えや大幅なリノベーション工事よりも低コストで行うことができるというメリットもあります。
◎ビルのリデザインを成功させる考え方

ビルのリデザインを成功させるためには、表面的におしゃれなデザインを加えればよいのではなく、まず現状の課題を洗いだすことからはじめる必要があります。時代の変化によってデザインの洗練さが失われていたり、入居者のニーズとのズレが生じている場合もあるでしょう。また照明やカラーによって、エントランスが暗く冷たい雰囲気になっていたり、サインの素材やフォントがバラバラで統一感ないといった具体的な課題もあるかもしれません。そのような課題を洗いだし、リデザインによってどのようなビルに再生させたいかというコンセプトを明確にすると、課題を解決するリデザインの土台となります。
ビルにどのようなテナントや居住者に入居してほしいのか、ターゲット設定を具体化し、入居者のニーズをリデザインに反映させることも重要です。たとえば、オフィスビルとして再生するのであれば、ビジネスシーンに合う洗練されたリデザインが求められます。また居住用のマンションであれば、ファミリー層や単身者など、入居者のライフスタイルにあわせたリデザインが必要です。さらに、周辺環境や景観との調和も考慮しなければなりません。エリアのカラーや景観から外れてしまうようなリデザインは、おしゃれであっても街並みから浮いてしまい、長期的には資産価値を損なう可能性があります。周辺と調和しつつ、美しい街並みに貢献するようなリデザインは、エリア全体のイメージアップにもつながります。
古いものを排除してすべてを新しく刷新するのではなく、既存ビルの個性をいかしてリデザインする工夫も大切です。既存の仕上げ材やデザインのなかには、新築ではだせないような建物の個性となっているものがあります。そのような建物の個性を活用しつつ、魅力を高めるようなデザインにしたり、洗練されたデザインを加えて再生させることができます。価値ある要素を残して不要なものを取り除くという取捨選択を行うことで、新築のビルとは異なる魅力をつくるリデザインが可能になります。
◎ビルの資産価値が向上するリデザインのポイント

既存ビルのリデザインには、ビル全体のイメージに大きく関わる外観から植栽や照明まで、さまざまなポイントが含まれます。コンセプトにあわせてサインを変更することによっても、建物の雰囲気や見た目の刷新が可能です。
〇サイン計画
ビルのリデザインでよく行われるのが、サインのリニューアルです。サインは、テナントの案内や目印の表示などを示すもので、ビルを利用する人以外にも通りかかる人など、多くの人の目に留まります。ただ目印となるだけでなく、ビルのブランディングにもつながる重要なポイントです。そのため、コンセプトにあわせてカラーやフォント、文字の大きさなども細かく計画することが求められます。たとえば、リデザインのコンセプトが高級感であれば、モノトーンを基調としたシックなデザインにしたり、オフィスビルであれば信頼感を与えるブルーを取り入れることができます。見やすさや分かりやすさといった実用性を兼ね備えつつ、洗練されたデザインを加えることで、サインそのものがインテリアの一部として機能します。
〇外観
外壁やエントランス、外構、屋根などの外観のリデザインは、ビルの第一印象につながります。外観は、建物のデザイン性を大きく変えやすく、イメージづくりやアピール力を高めるために効果的な部分のため、戦略的なリデザインが求められます。とはいえ、広い面積のある外観のすべてを一新するとなると、高いコストが発生します。そのため、効果とコストのバランスを見極め、的を絞ったリデザインをすることが重要です。目に留まりやすいエントランス周辺や一階部分の外装を重点的にリデザインし、それ以外の箇所は既存の仕上げ材をいかすこともできるでしょう。このように、一新する箇所と既存のものをいかす箇所を分けて外壁のリデザインを行うなら、コストの範囲内で最大の効果を得られます。
〇植栽
無機質になりがちな空間に、あたたかみを加えられるのが植栽の配置です。建物の個性が薄れてくると、暗いとか冷たいといった印象になりがちなため、植栽によるリデザインで無機質な印象をやわらげましょう。植物のグリーンは、視覚的な見栄えのよさを向上させるだけでなく、緊張をやわらげるリラックス効果や心理的なやすらぎをもたらす効果があります。たとえば、エントランスにグリーンウォールを設置したり、共用部に中型や小型の植栽をバランスよく配置するなら、大幅な改修を行わなくても心地よい空間をつくりだせます。維持管理の手間がかからない種類を選べば、長期的な運営における課題も解決できます。
〇照明
照明は、外観やサイン、植栽など、リデザインした要素をまとめあげ、より効果的に魅せる役割を果たします。ただ明るく照らすための照明ではなく、リデザイン部分をより際立たせ、空間の雰囲気をつくりだすために重要です。スポットライトでサインを照らしたり、植栽を包み込むような間接照明で照らすと、光によってつくる陰影も意匠として活用できます。また、あたたかみのある色温度の照明を採用すれば、暗く冷たい印象になりがちな共有部分をあたたかいイメージにリデザインすることもできます。壁や天井を照らすと、空間に広がりや解放感のある印象に変えられるため、リデザインによって物理的な変化が難しい狭さや低さといった問題を解決することも可能です。
◎ビルのリデザインを実施した当社の施工事例
テナントや入居者に、魅力的で個性のあるビルだと感じてもらうために、建物のバリューアップにつながるリデザインが有効です。既存ビルの雰囲気や個性をいかした、外観の大胆なリデザインや照明の活用によって、新たな魅力をつくりだすことができます。
〇名古屋市泉テナントと住居の複合ビル

名古屋市泉にあるテナントと住居の複合ビルにおいて、オフィス棟のエントランスのリニューアル工事に参画しました。設計からリデザイン、施工まで一貫して担当しています。もともと清潔感がありきれいにデザインされた建物でしたが、テナントスペースへの誘導と雰囲気の刷新を狙い、サインボードのあったアプローチの壁面をリデザインしました。建物のアイキャッチとなるような、幅をランダムに変化させた暖色系の錆風パネルを採用し、縦方向のスリッドによりリズム感が生まれ、自然と建物内部へ誘導する構成としています。足元にも、植栽と間接照明を配置し、昼と夜の印象が大きく変化する空間を演出しています。さらにエントランスの壁面にも、錆風パネルと裏地が透けるパンチングメタルが交差するよう配置するリデザインを行いました。既存デザインの上質さに調和しつつ、ダイナミックな印象を与えるリデザインになっています。錆風パネルの背後にはライン状の間接照明を配置しており、視点によってさまざまな表情が生まれます。
◎まとめ
ビルのリデザインでは、ただおしゃれなデザインを加えるのではなく、課題解決とビル再生のコンセプトにあわせたリデザインによって、建物の新しい魅力や個性をつくりだします。リノベーションのような大規模な改修をすることなく、サインのリニューアルや外観部分のリデザインなど、的を絞ったリデザインが大切です。既存ビルの資産価値や個性を向上させるリデザインにご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。