コラム
内装デザインに新たな表現を生み出す床の塗装仕上げの特徴
◎内装における床の役割

内装デザインを考える際、壁の色や配置する家具の選定などを、こだわって選びたいという人は多いでしょう。それと比較して、床のデザインや施工、色などに関しては、あまり気にかけない場合が多いかもしれません。しかし、オフィスや店舗、住宅といったあらゆる空間において、床は広い範囲を占める要素となるため、施工方法やデザイン、色などが、全体の雰囲気に大きく影響を及ぼします。
そのなかでも床に使用する色は、とくに空間の印象を左右します。一般的に、ホワイトやブラウン、ナチュラル、グレーなど、どのような家具や壁にも合いやすいカラーが多く選ばれます。たとえばホワイトの床は、光を反射して空間に清潔感や解放感、明るい印象などを与えます。またブラウンは、温かく落ち着いた雰囲気や重厚感を与え、クラシカルな空間によく合います。その中間色であるナチュラルは、自然な温かい雰囲気をつくり、どのようなテイストとも調和しやすいカラーです。さらに人気が高まっているグレーは、スタイリッシュで洗練された印象を空間に与えます。もちろんこのほかにも、さまざまな色を使用して個性をだすことが可能です。このような床のカラーの選択は、心地よさや集中力を高めるといった心理的な効果にもつながり、空間の雰囲気づくりのベースとなります。
床のデザインは、エリア分けをするゾーニングの役割も果たします。たとえばオフィスにおいては、廊下と作業スペースなど異なる機能をもつ空間を分けるために、床材の種類や色、パターンなどを変えることができます。そうするなら、物理的な仕切りがなくても視覚的にゾーニングができ、オープンな空間の機能性を高められます。また床の選択は、メンテンナンス性にも大きく影響します。人や物が頻繁に移動する場所では、耐久性がある床の素材を選択する必要があり、重い物を置く場合も負荷に耐えられる強度が求められます。またホコリや汚れなどを取り除きやすい素材であれば、清掃しやすくなり清潔感を保てます。水回りのエリアであれば、水や湿気から守るための耐水性も必要です。このように床は、空間のデザインや機能において重要な役割を果たしています。
◎床の仕上げに選択できる塗装の特徴

一般的に多く使用される内装の床材には、フローリングや大理石などの天然素材、ビニル素材のシートやタイル、タイルカーペット、カーペットなどがあります。このような床材を使用するケースに加えて、モルタルやコンクリートの床に塗装で仕上げる手法も、広く用いられるようになっています。床の塗装というと、ベランダやバルコニー、屋上などで見られる防水機能つきで艶がある色合いの塗料、駐車場などで見られる耐久性のあるざらざらとした塗料などが一般的です。内装では、工場や施設の床における機能的な手法として、重機や薬品に耐えるためにコンクリートを塗装して仕上げることが多くあります。またスケルトンの空間で、モルタルの床に施されたクリアの塗料が、無骨でモダンな雰囲気として好まれてきました。
このような外装や内装の一部で用いられていた塗装仕上げだけでなく、住宅やオフィスなどの床でも、塗装で仕上げる手法が増えています。モルタルの風合いを活かした仕上げにより、デザイン性が高くおしゃれな空間をつくりだせるため、人気が高まっているのです。クリア塗料だけでなく色をつけて塗装すると、デザインの幅が広がり意匠の重要な要素となります。また塗装による床の仕上げは、機能面においてもメリットがあります。床に塗装することで、コンクリートやモルタルのひび割れを防いだり、汚れが染みつくのを避けられ、床の耐久性や清潔感を向上させることができます。
床は、人が歩いたり物を置くことにより負荷がかかり、汚れがつきやすい場所です。そのため従来の塗装では、剥がれの心配や傷がネックになり、塗装仕上げが選択肢に上がらない傾向にありました。しかし近年は、従来の床塗装では難しかったような意匠性を実現できる、施工方法や塗料の開発が進んでいます。ただ塗装するだけでなく、密着するための下塗りのあとに意匠性のある塗装をし、さらに強度をつけるための仕上げという工程を踏むことにより、塗装の強度を高めています。また顔料と骨材の組み合わせや耐久性の高い塗料を使用することにより、決まったパターンしかなかったモルタルの床における塗装のアプローチの幅が広がっています。
◎デザイン性を高める床塗装の種類

内装における床の塗装仕上げでは、機能面だけでなくデザイン性を高める、さまざまな表現が可能になっています。骨材と組み合わせたり独自のカラーを生み出す塗料などにより、空間に個性と魅力を加えます。
〇モルタル・コンクリートの質感を活かす塗料
シンプルでありながらデザイン性を高められるのは、モルタルやコンクリートの床の質感を活かす手法です。この手法では、床材として使用されるモルタルやコンクリートの上に、透明の塗料を塗って仕上げます。透明の塗料には、床の表面を保護する役割もあるため、耐久性や防塵性を強化しつつ、無機質な素材感を活かしたデザインをつくりだせます。床の質感を活かす塗料にも種類があり、ひとつは塗料による濃さの変化もほとんどない透明のタイプです。また、床の質感を残しつつ着色する塗料や色をつけつつ、透明感をだす塗料などもあります。このような塗料を使用すると、淡いグレーやブラウン、グリーン、ピンクなどのニュアンスカラーをデザインに加えつつ床の質感も引き立ちます。また、重ね塗りをしてあえてムラをだしたり、複数の色を重ねて深みのあるデザインを表現することも可能です。
〇骨材を組み合わせる塗料
素材を組み合わせてデザインをつくりだす手法として、骨材を混ぜて使用する塗料があります。ベースとなる塗料のなかに、天然石やセラミックなどの骨材を混ぜて、デザイン性をもたせる施工方法です。骨材を混ぜ込むことで、ひとつの色では出せない立体感や奥行のあるデザインを表現できます。ベースカラーと骨材の組み合わせだけでなく、骨材の大きさや素材、カラーなどにより、さまざまなデザインを実現することが可能です。施工方法には、塗料と骨材を混ぜて塗装する方法以外にも、下地を塗ったあとにチップを散布して上塗りをする方法などもあります。施工後に表面を研磨して仕上げることで、表面はなめらかな仕上がりとなり、高級感や重厚感のある雰囲気になります。
〇独自のカラーを表現できる塗料
ほかにはない独創的なデザインをつくりだすのが、独自のカラーを表現できる塗料です。このような塗料のひとつに、化学反応で色が変化する塗料があります。ただの塗料の色通りに発色するのではなく、コンクリートやモルタルに塗布すると、施工条件に合わせて自然の色に近い風合いに変化します。色の変化やムラ、まだら模様などが化学反応によって出てくるため、人工的な色とは異なる深みが出て、ほかにない独自のデザインが可能です。また、透明の塗料に顔料を練り込むことで、無限のカラーリングをつくりだせる塗料もあります。100色以上の顔料を組み合わせて、グリッターできらめきを追加することもでき、空間に合わせたオーダーメイドのカラーが可能です。繊細な色のグラデーションを表現したり、色を切り替えてデザインをつくりだすなど、高い意匠性を実現します。
〇文字や柄をデザインできる塗料
床に文字や柄をデザインするのに適しているのが、ステンシルを用いた塗装方法です。そのような手法を用いると、もともとデザインのないコンクリートの床や駐車場などにも、既存の床のまま新しい表現を加えることができます。たとえば、コンクリート床にステンシル目地を貼ってからスプレーで塗装し、目地をとってからトップコートを塗ると、レンガ調やタイル調などのデザインをつくりだせます。また、床にショップのロゴなどをデザインすることも可能です。保護コーティングをする薄膜の塗料を使用して、描きたいデザインのステンシルを貼っておいてから塗装します。塗料が乾いてからステンシルを剥がすと、床にロゴや文字をデザインすることができ、最後にトップコートを塗って剥がれを防ぎます。
◎床の塗装仕上げで独自のデザインを生み出した当社の施工事例
内装デザインにおいて、床は空間の雰囲気や居心地のよさなどに大きな影響を与えます。デザイン性の高い塗料を用いた床の仕上げは、新たな表現や独自のデザインを生み出し、世界観のある個性的な空間をつくりだします。
〇東京港区イベントスペース・スタジオ

港区にあるイベントスペース・スタジオの内装工事に参画しました。築30年のビルの1階にあった印刷工場を、リノベーションして生まれ変わらせるプロジェクトです。床は、モルタルやコンクリートとの化学反応によって色と柄が現れる特殊な塗料を使用して仕上げています。施工環境によって色や柄が現れるため、意図と異なる風合いが出る場合もありますが、不確定要素としてのデザイン性とそこでしか見られない個性を引き出すことができました。床の風合いを活かしつつ、落ち着いたブラウンカラーのグラデーションが全体の雰囲気とも調和し、おしゃれな空間を演出しています。
◎まとめ
塗料や施工方法の開発などにより、これまで難しかった塗装による表現や意匠性の実現が可能になっています。床の塗装以外にも、新たな部分での施工や表現が実現している建材は多くあります。できることや知っていることから考えてデザインするだけではなく、常にチャレンジしつつ適材適所を見つけるプロセスも、デザインにおいて求められるポイントです。床の塗装仕上げによる内装デザインにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。