コラム
オフィスのデザイン設計において重要な什器の導入と選定のポイント
◎オフィスのデザイン設計における什器の導入

オフィスの意匠設計とは、新設や移転、リニューアル、レイアウト変更などで必要となる、外観や内装のデザイン設計を指しています。デザイン設計の内容は多岐に渡りますが、クライアントの要望を聞き取り、オフィスのコンセプトや社員数、働き方などに合わせたデザイン設計が必要です。設計には、オフィスの間取りやレイアウトの計画、完成イメージに沿ったデザインやカラーの立案などが含まれます。さらに、オフィスの意匠設計には、什器の提案やレイアウトも組み込まれています。
什器とは、家具や道具、備品などを指しており、オフィスで使用する幅広い器具の総称です。一般的に家庭で使用するものは家具と呼ばれ、オフィスや店舗など業務で使用するものは什器と呼ばれています。オフィスにおいて、什器は重要な役割を果たしています。たとえば、デスクはオフィスで仕事を進めるうえで欠かせない什器であり、業務内容に合ったサイズを選ぶことが重要です。また近年は、さまざまなオフィスレイアウトが採用されるようになっているため、個人の専用デスクだけでなく、フリーアドレス用のデスクなども必要になる場合があります。さらに、会議用のデスクや大人数での作業スペース用のデスクなども、オフィスでの働き方に応じて必要です。
オフィスチェアも、社員がストレスなく仕事するうえで重要な什器です。快適な座り心地で身体の負担を軽減できるなど、機能性の高いチェアは、作業の効率化や生産性の向上に役立ちます。オフィスに必要な什器は、それだけではありません。クライアントとの打ち合わせに使用する来客用のテーブルセットや書類を収納するためのキャビネット、空間を仕切るためのパーティションなども必要となるでしょう。オフィスの意匠設計で什器を選定し、既製品から最適なものを決める作業は、働きやすい環境作りやオフィスの空間デザインにおいて重要です。
◎オフィスの什器を選ぶ際のポイント

オフィスの什器は、社員の働きやすさや仕事の効率化につながるだけでなく、デザイン面でも大きな役割を果たします。企業のブランディングや会社全体の雰囲気にも関わるため、さまざまな点を考慮して選択する必要があります。
〇機能や目的
まず考慮すべき点として、必要な機能や目的を明確にするというポイントをあげられます。オフィスで社員が働くうえで、必要な什器がすべて揃っていることは、スムーズな業務進行のために欠かせません。オフィス全体のニーズやコンセプト、社員の働き方に合った機能を持たせるためには、作業の仕方や業務内容を把握したうえで選定を行います。また、それぞれの使用目的を明確にすることも大切です。同じデスクであっても、個人や大人数での使用、来客用など目的によって選定するものが異なるでしょう。固定席であれば、書類をしまう引き出しやパソコンを配置するスペースが必要となり、フリーアドレスであれば、書類やノートパソコンを収納できる共有ロッカーが必要です。このように、機能や目的によって適切な什器は異なります。
〇サイズ
サイズが作業目的に適切かどうかも、選ぶ際のポイントとなります。個人の席や会議室、フリースペースなどには、作業のために十分なスペースを確保できるサイズを選定します。とはいえ、サイズが大きければ大きいほどよいわけではありません。オフィス全体の空間スペースには、限りがあるからです。複数人でも問題なく通れる通路幅や、移動しやすいスムーズな導線の確保も必要です。通路が狭かったり、設備や会議室まで移動しづらかったりすると、社員の作業効率を落とす要因にもなります。また、スムーズな導線は、社員同士のコミュニケーション向上にも効果的です。オフィスの空間に合わせて、快適に仕事ができるスペースを考慮し、サイズを選定する必要があります。
〇デザイン
什器のデザインは、オフィス全体のデザインや雰囲気に直結する重要なポイントです。どのようなオフィスにしたいかといった、コンセプトに合わせたデザインを選びましょう。木などの天然素材を使用したデザインは、ナチュラルな雰囲気で温かみや上品さを演出できます。また、シックなカラーやステンレス素材などは、シンプルで清潔感や信頼感などの印象を与える効果があります。ほかにも、モダンなデザインで高級感を演出したり、企業のイメージカラーを取り入れたりするのもよいでしょう。オフィスのデザインは、リラックスできる雰囲気や落ち着いた環境のオフィスデザインは、社員のモチベーションにも影響を与えます。またコンセプトに合わせたデザインは、外部に対するブランディングとしても効果的です。企業のブランドイメージを向上させ、他社との差別化を図れます。
〇耐久性
オフィスでつかう什器は、長期間使用することを考慮して、耐久性が高い製品を選びましょう。デザインや機能性を重視していても、すぐに壊れて買い替えが必要になってしまうなら、コスト面で大きな損害です。壊れたまま使用するストレスや見栄えの悪さ、買い替えにかかるコストなどを考慮すると、品質がよく耐久性のある製品はメリットが大きいといえます。
〇予算
オフィスの移転やリニューアルなどにかけられる予算は限られているため、コストも考慮すべき大切なポイントです。デザインや品質にこだわりすぎて高価な什器を選ぶなら、予算を超えてしまう場合もあります。高価であれば、必ずしもよい製品というわけではありません。コストをおさえた製品のなかにも、品質に優れデザイン性の高いものが多くあります。予算内で機能やデザインがマッチする、コストパフォーマンスの高い什器を選定しましょう。
◎オフィス什器の発注先

従来のデザイン設計では、オフィス什器メーカーの既製品を提案することが基本となっていました。近年は、一般向け店舗のビジネスシリーズの販売も増加し、オフィスデザインにおける選択肢のひとつとなっています。
〇オフィスの什器メーカー
オフィス什器を取り扱っているメーカーとして、国内の代表的なメーカーがいくつかあります。1945年創業のオカムラは、国内トップシェアを誇る大手メーカーです。開発や製造から物流に至るまで一貫した品質保証体制があり、多くのオフィスで採用されています。イトーキは、130年以上の歴史がある老舗メーカーです。文房具の販売からはじまり、事務機器やオフィス什器の製作を行うようになりました。公共施設での使用や、リモートワーク対応の実績などもあります。同じく文房具の販売をしているコクヨは、1960年代からオフィス什器の製作を行っており、安価から高単価の製品まで取り扱っているメーカーです。メーカーの既製品は、さまざまなニーズに対応できる幅広いラインナップを展開しているのが、メーカーの既製品の特徴です。
〇一般向け店舗のビジネスシリーズ
IKEAやニトリ、無印良品など、家庭で使用するような一般向けの家具を製造、販売している店舗でも、オフィス什器を販売しています。オフィス用のデスクやチェア、収納キャビネット、応接セットなどを、オフィス家具としてビジネス向けに取り扱っています。これまで、一般向け店舗の什器はコスト面が強みな一方で、従来のメーカーに品質面で劣る印象がありました。しかし、近年では品質面も向上しおり、意匠面でもオフィス什器メーカーにない洗練されたデザインやシンプルなカラーを揃えています。コストをおさえて意匠性を確保する方法として注目されているのが、一般向け店舗のビジネスシリーズです。
〇オーダーメイドでの発注
既製品で合うサイズがない場合や、希望しているイメージの製品がない場合などは、オーダーメイドでの発注も可能です。オーダーメイドであれば、理想どおりのデザインや機能を実現したり、デッドスペースを有効活用したりできます。コンセプトに合わせたオフィスのトータルコーディネートも可能でしょう。とはいえ、オーダーメイドは既製品と比べると、5倍から10倍程度のコストが発生するため、予算との兼ね合いを考慮して検討する必要があります。
◎オフィスのデザイン設計で什器の提案を行った当社の施工事例
オフィス全体のニーズや社員の働き方、企業のコンセプトなどに合わせた什器の提案は、オフィスのデザイン設計における重要な要素です。適切な什器の導入は、快適な環境による業務の効率化や、外部に向けたブランディングなど、多岐に渡る効果を発揮します。
〇江東区豊洲シェアオフィス

江東区豊洲の市場前駅直結ビルにあるコワーキングスペースの新装工事に参画し、意匠デザインおよび内装工事を行った事例です。豊洲の海をイメージし、「波と光」をテーマに意匠デザインを設計しました。ブルーとグレーを基調としたカラーをメインに、シルバーと木目をアクセントに取り入れ、さわやかさと涼しさを感じられるオフィス空間としています。入口付近には、重量感のあるタモ集成材を使用したビッグテーブルを配置し、存在感のあるレイアウトに仕上げました。テーブルの真ん中に配置したグリーンプランダーは、目隠しになるとともに、オフィスのさわやかな雰囲気を演出する役割を果たしています。
◎まとめ
デスクやチェア、キャビネットなどの適切な什器の選定は、オフィスの目的やコンセプトを実現するために欠かせません。オフィスのデザイン設計では、必要な機能やサイズ、空間全体の雰囲気、予算など、さまざまなポイントを考慮して什器の提案を設計に組み込みます。既製品においても、幅広い選択肢から提案が可能です。什器の提案を含むオフィスのデザイン設計にご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。
