コラム
建物のデザイン提案において3Dパースを活用するメリット
◎立体感を表現するパースの魅力と種類

パースは、建築やインテリアデザインなど、さまざまな分野で用いられている手法です。透視図という意味の英単語である、Perspective drawingから取られています。建物の外観や内観の完成予想図を表現する際、平面の図面ではイメージしにくい場合が少なくありません。パースは、奥行きをつける図法で建物や空間を立体的に描くことにより、デザインを視覚的に表現します。完成図やコンセプトを視覚的に伝えられるため、デザイン提案やクライアントとのコミュニケーションなどに広く活用されている手法です。
パースにはさまざまな種類があり、建物の外観を描いて建築物の構造やデザインを表現するものは、外観パースと呼ばれています。また内観パースやインテリアパースは、内装設計や空間デザインなどの際に用いて、室内のイメージを表現するものです。内観を立体的に描くことにより、室内の家具の配置や照明の様子、色彩などが視覚化され、デザインをリアルにイメージできます。パースによる表現は、基本的に人が立っているときの視点であるアイレベルで描かれます。アイレベルと異なり、空間から見下ろして全体像を一望する視点で描く手法が、鳥瞰(ちょうかん)パースです。鳥瞰パースは、建物全体の構造や室内の配置など、アイレベルでは把握しきれない広い範囲を表現する際に用いられています。
◎3Dパースの表現方法と活用技術

パースには、視覚的に表現する用途や目的、デザインする場所の種類だけでなく、手法にも違いがあります。手書きによって立体的な表現をすることも可能で、昔から伝統的な技法として用いられてきました。近年は、よりわかりやすい手法としてCGが導入されています。CGは、コンピューターグラフィックスを使って描く方法で、手書きよりもより詳細でリアルなデザインの表現が可能です。CGを用いる手法は、二次元の2Dと三次元の3Dに分類されます。2Dの場合はCGを用いてデザインするものの、表現は平面的です。
3Dパースは、3DCGソフトを用いて描く手法で、平面図や立面図では表現しきれない空間デザインを三次元の立体で組み立てます。物体の距離に応じて見え方が変わる目の仕組みを真似ている3Dパースは、奥行きや遠近感を表現できるため、立体的な視点でよりリアルなデザイン表現が行える手法です。設計図に基づいて実際のサイズや比率などを正確に反映させ、使用する素材の質感や色を再現して、空間デザインにリアリティを加えます。また、自然光や照明などによる光源を設定して、陰影や奥行きを作り出し、季節や時間の表現を細部まで作り込むことも可能です。さらに、ひとつの視点からだけでなく、さまざまな角度からの見え方も再現できるため、視覚的な確認がしやすくなります。周辺の環境や風景なども描けるため、プロジェクトや空間デザイン全体の雰囲気をより正確にイメージしやすくなるでしょう。
3Dパースを活用したデザイン提案では、さらにリアルな体験ができる最新の技術が注目されており、導入が進んでいます。そのひとつは、360°VRを活用した3Dパースです。360°VRを活用すると、デザインした空間内を上下左右と自由に移動しながら、360°視点を変えて映像を見られるため、まるで実際にその場にいるかのような感覚を体感できます。デザイン提案に360°VRを導入することで、リアリティが増し、コンピューターによって作ったデザイン空間を把握しやすくなるのが魅力です。さらに、最近では360°VR技術を発展させた、VRウォークスルーという手法も注目されています。VRウォークスルーは、制作したデザイン空間のなかを移動し、実際に空間内を歩いているかのような体験が可能です。没入感のある体験ができることで、デザインの詳細や雰囲気をより感じ取りやすくなるでしょう。
◎デザイン提案に3Dパースを用いるメリット

3Dパースは、空間デザインやリノベーションなど、設計図を視覚的に伝えたい場面で欠かせないツールです。デザイン提案で3Dパースを上手に活用することで、クライアントとのコミュニケーションやコスト削減などにおける多くのメリットがあります。
〇視覚化によってイメージを明確にできる
文字や設計図では伝えきれないデザインを3Dパースで詳細に視覚化することにより、クライアントが完成形をイメージする手助けになります。使用する素材の質感や照明による効果、陰影など、細部まで作り込むことで、リアリティのあるデザイン表現が可能です。デザイン提案を視覚的に伝えられると、クライアントの理解が正確になり、コミュニケーションや決定が円滑に進みやすくなります。
〇シミュレーションできる
3Dパースはコンピューターを使って制作するため、施工する前に色や素材の変更、照明や光の条件下での状況など、さまざまなデザイン案をプレビューできます。また、家具のサイズ確認や配置のシミュレーションなども可能です。壁紙や床材、家具のテイストなどを変更すると、雰囲気がどう変化するのかといったシミュレーションを行えるため、最適なデザインを見つけやすくなります。デザイン案へのフィードバックや要望をすぐに反映させられるため、クライアントとの調整も容易です。また、綿密なシミュレーションを行っておけば、施工後に修正が必要になる事態も防げます。
〇共通の理解を持てる
3Dパースを活用したデザイン提案によって設計図を具体的にビジュアル化すれば、関係者の間で共通の理解やイメージを持ちやすくなります。話し合いを進めてデザイン提案をしても、設計者やクライアント、ほかの関係者などの間でイメージの相違が生じる場合があります。施工後に相違があることに気付いた場合、プロジェクトの進行中に大幅な修正が必要になる可能性もあるでしょう。建物の完成形を双方で確認し、合意できていれば、クライアントとの相違を最小限に抑えられ、信頼関係を維持できます。また施工前に共通の理解を得られることは、効率的なプロジェクトの進行にも貢献するでしょう。
〇訴求率が高まる
3Dパースは、美しいビジュアルとリアリティのある表現によって、デザイン提案を視覚的に伝えられる技術です。クライアントへの訴求率も高められ、プレゼンテーションを成功に導く手法ともいえるでしょう。伝わりにくい雰囲気やデザインの意図をビジュアル化することにより、魅力的でクライアントの印象にも残りやすくなります。デザイン提案では、直観的に理解でき、詳細な点まで視覚的に把握しやすいデザインを提示することが大切です。デザイン提案に対するクライエントの興味や関心が高まれば、明確な意思決定にもつながります。
〇コストや時間の削減できる
物理的なモデルを使用する必要がないため、3Dパースを使ったデザイン提案はコスト削減にもつながります。ソフトウェアを使用するため、手書きのものと比べて制作時間も少なくなり、効率的に作業を進められます。施工中に問題点が発生したり、修正が必要になったりした場合でも、3Dパースで修正しながらリアルタイムでプレビューできるのも魅力的な点です。クライアントからの要望や修正に対する作業も容易になるため、コストや時間の削減にも役立ち、プロジェクトの進行もしやすくなるでしょう。さらに、3Dパースはデータとして保存や複製を行うことが可能です。ほかのプロジェクト用にデータを再利用したり、アーカイブとして残しておいたりといった活用法があります。デザイン提案で使用した素材やカメラアングルなどを、別のプロジェクトでも利用できれば、効率的に作業が進められます。
◎3Dパースを用いてデザイン提案を行った当社の施工事例
デザイン提案の完成イメージに相違があると、施工が進んでから変更が必要になり、プロジェクトが遅れたり無駄なコストが発生するなどの問題が生じやすくなります。3Dパースを用いてデザインに対するイメージを擦り合わせておくことは、プロジェクトを円滑に進めるうえで非常に重要です。
〇文京区千石マンション

文京区にあるマンションの改修工事に参画し、外観の改修工事の提案や室内のデザイン提案を、3Dパースを用いて行いました。マンション外観は、既存のレンガをいかしたデザインとし、小石川エリアの自然をコンセプトに、木材や水を連想させるガラスブロックの使用をご提案しました。エリアの落ち着いた雰囲気に調和するよう、室内の床や天井には木材を使用し、壁は深い色の素材を採用したデザインです。3Dパースを活用することで、リビングやキッチン、寝室などで家具や照明を配置した際のイメージがわかりやすいデザイン提案が実現しました。
◎まとめ
3Dパースは、コンピューターグラフィックスを使って、三次元の立体的な図を描く手法です。360°VRや実際に歩いているかのような感覚になれるVRウォークスルーなどの技術を活用すれば、外観や内観の完成予想図をよりリアルにイメージできます。さまざまなケースをシミュレーションできるため、最適なデザインを見つけることも可能です。3Dパースを用いたデザイン提案によるリノベーションにご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。
