コラム
内装デザインに欠かせない照明設計のポイント
◎照明設計が求められる理由

照明の役割は、大きく分けるとふたつあります。人の活動内容に適した光で空間を照らす明るさの確保と、ある空間を魅力的で雰囲気のある場所へと作り変える空間演出です。とくに、オフィスや講義室のように作業や勉強をする部屋では、明るさを確保した照明設計が大切です。作業や勉強をするときは、物事に集中できる空間が求められます。室内に設置された照明が明るすぎて眩しいと感じたり、暗すぎて文字が見にくかったりすると、作業がはかどりません。明るさが確保されていないと、視力低下や目の疲れをはじめ、人の体調に影響する可能性もあります。また、明るくても照明の光にムラがあり、場所によって明るさが変わる場合は、光が均一に広がる設計も意識しなければなりません。
一方、ロビーや飲食店など人が滞在する空間では、空間演出に重きが置かれます。滞在目的の空間では、場のムードや居心地のよさがポイントになるため、照明設計と空間演出は切り離せない要素です。作業や勉強をする空間では、クールな雰囲気があり、明るく周囲を照らす青白い照明が好まれます。一方、雰囲気や居心地を求めて滞在する空間で好まれるのは、リラックス感や落ち着きを演出できる黄色味を帯びた光です。また、照明によって照らされたテーブルや壁紙などの色合い(演色性)も、空間を演出するうえで重要な要素になります。
◎部屋のイメージを決める照度設計のポイント

人の活動に適した明るさの光と、空間の使用目的にあった光を放つ照明を選択するには、照度設計が欠かせません。照度設計には、空間の用途を明確にしたり、光の色や照明の明るさを検討するなど、さまざまな設計項目があります。
〇空間の使い方を明確する
照度設計をする際は、部屋や空間の使用目的を明確にしましょう。使い方が決まっていないと、空間に適した照明選びや、配置設計が中途半端になってしまいます。居心地のよい落ち着いた雰囲気で休憩や談笑をする空間と、事務作業や授業を受ける部屋の照明は異なります。なかには、複数の使用目的に対応できるように設計している部屋もあります。また、特定の用途を決めない場合は、光の色合いや明るさを変更できる照明を取り付けると、部屋の雰囲気の調整がしやすいでしょう。
〇光の色(色温度)を考える
空間の用途を明確にしたあとは、照明から放たれる光の色(色温度)を考えます。光の色は、青白い色合いや自然光に近い昼白色をはじめ、多彩な色味が展開されており、空間の雰囲気や印象を大きく変えます。近年、広く普及しているLEDには、電球色や昼光色などの種類があります。色温度が低く黄色やオレンジの色合いがある電球色は、温かい雰囲気を演出できるので、リラックスをもう目的とした部屋に合うでしょう。一方、色温度が高く青みがかった光を放つ昼光色は、さわやかな明るさと活動感をもつため、オフィススペースや書斎などに適しています。
〇照明の明るさ(照度)を決める
照度設計では、照明の明るさ(照度)の選択も重要な設計項目のひとつです。部屋の使用目的を明確にしていても、使用目的にそわない明るさだと、効率よく仕事ができなかったり、居心地よく滞在できないことも。たとえば、オフィスワークの場にある照明が暗いと、パソコンや資料の文字や図が見えにくくなり、作業効率の低下が懸念されます。照明の明るさが足りない環境も課題ですが、眩しすぎる環境も同様です。照明を直接見ていなくても、空間自体が眩しすぎると物が見えにくくなったり、ストレスを感じることもあります。照明の明るさは、明るければよいわけではありません。快適に過ごせる空間を作るには、使用目的と利用する人の目に配慮した設計が求められます。
〇照明の光が照らせる範囲を確認する
光の色合いや明るさが定まったら、照明が照らせる範囲の検証を行います。光が放たれる向きや範囲は照明器具によって異なるため、照らしたい場所が明るくなっているかの確認が必要です。また、明るかったり暗かったりと光のムラがある場合、空間の使用用途によっては、改善が求められます。とくに、オフィスや教室のような仕事や勉強をする空間では、照明の光にムラがない方が快適です。光に強弱をつけて空間演出をするのか、ムラをなくして光が均一になるように調整するのか、空間の用途に応じて柔軟に設計しましょう。
◎空間や内装デザインを意識した意匠照明設計

照明には、空間の用途に適した光で照らす役割のほかに、空間をより魅力的に変身させる役割があります。デザイン的な観点から照明を選定し空間演出をする意匠照明設計では、デザインコンセプトを定めたり、建築化照明や間接照明を活用してデザイン性を高めましょう。
〇照明を設置する空間のデザインコンセプトを決める
意匠照明設計では、まず照明を取り付ける空間のデザインコンセプトを検討します。空間デザインの方向性が定まっていないと、どんなに個々の照明器具がよくても空間に統一感が生まれません。洗練されつつも仕事に集中できる空間が求められるオフィスでは、個性的な装飾のある照明よりも、シンプルで統一感のあるものが好まれるでしょう。ホテルのロビーのような高級感と落ち着き、居心地のよさがコンセプトの空間では、美しい装飾やエレガントなデザインの照明が適しています。意匠照明設計で部屋の用途に適した明るさや光の色をいかせるかどうかは、設定したデザインコンセプトにそった照明の選定できるかが決め手です。照明を選ぶ前にコンセプトの設定を行うことは、空間の方向性を決定づけるため、意匠照明設計には欠かせない作業といえます。
〇建築化照明や間接照明を活用する
建築化照明や間接照明の活用も、空間演出やデザイン性の向上に大きく役立ちます。建築化照明は建物の設計段階から照明設置が完成形に組み込まれているため、雰囲気やデザイン性を保ちつつも、悪目立ちせず空間全体になじみます。また、基礎設計から照明設置が含まれているため、ほかの機器や配管と干渉しません。建物の基礎設計後の意匠図を参考に設置される間接照明は、天井や壁に後から取り付けられ、インテリア照明として活用されます。たとえば間接照明のひとつであるコープ照明は、天井を大きく照らして明るさを確保しながらも、空間の広がりや落ち着いた雰囲気の演出が可能です。また、壁面に設置するコーニス照明は、部屋に奥行きや高さを与えてくれます。壁紙も照らすため、壁の模様も際立たせられる照明器具です。
〇照明器具の種類やデザインにこだわる
照明を設置する空間の雰囲気をより引き立てる意匠照明設計では、照明器具のデザインや種類にもこだわりましょう。内装デザインにおいては、インテリアと調和するデザインの照明を選ぶと、コンセプトや雰囲気を高められます。照明を活用して空間を演出したり美しくしたりすることで、よりコンセプトを打ち出せる空間を作れます。たとえば、ペンダントライトやシャンデリアは、アクセントとなるほか、空間全体のデザイン性を押し上げられる照明のひとつです。また、照明を設置する場所に高級感を演出したい場合は、色合いや大きさ、形を検討しながら、コンセプトにそったハイブランドの照明を選んでもよいでしょう。
◎照度設計と意匠照明設計を取り入れた当社の施工事例
内装デザインにおいて照明を取り入れる際は、照度設計と意匠照明設計をしたうえで行います。空間の用途に合致した明るさの確保と、雰囲気をより磨き上げる照明演出が融合して、空間全体に統一感が生まれます。
〇東京目黒区住宅マンション

目黒区自由が丘にある住宅・マンションの照度設計と意匠照明設計を含む内装工事に参画しました。まずは空間の使用目的を確認し、目的にそった照度設計を行っています。リビングや寝室、テラススペースに必要な照度を確保しつつ光の色合いを選定し、暮らす人がリラックスできる設計を心がけました。意匠照明設計では、居室のデザインコンセプトをひとつひとつ確認しました。どの部屋のデザインコンセプトも洗練された空間だったため、スタイリッシュなデザインの照明を駆使して空間演出を行っています。それぞれ形が異なるペンダントライトを配置して、単調な空間が続かないよう工夫を凝らしました。また、おしゃれな空間演出に適した間接照明も取り付け、天井を縁取るように照らしています。的確な照明設計を行ったことで、いずれの部屋もハイセンスな空気が漂う空間に仕上がりました。
◎まとめ
内装デザインを見直したり部屋の使用目的を変えたりするとき、照明の設計は慎重に検討したい要素のひとつです。照明の選択は、空間の統一感や居心地に強い関連性があります。照明設計を進める際は、明るさや光の色味を選定する照度設計と、デザインの視点から照明を選ぶ意匠照明設計が欠かせません。照明を取り付けるときに必要なふたつの設計、照度設計と意匠照明設計にご興味がある方は、当社までお気軽にお問い合わせください。
