コラム
施工管理技士がマネジメントする施工管理体制の業務と重要性
国家資格の施工管理技士は、建築現場を包括的に管理するために必要な資格のひとつです。施工管理技士の資格を持つ人物は、建築現場で工程管理や設計管理をはじめ、施工管理体制を敷いて現場を指揮します。施工管理技士がマネジメントする施工管理体制は、建物を建てたりリフォームするプロジェクトにおいて、重要な役割を果たします。この記事では、施工管理技士がマネジメントする施工管理体制の業務や重要性についてご紹介します。
◎建築現場を管理する施工管理技士とは

施工管理技士は、建築プロジェクトの施工管理体制を統括するポジションですが、管理する工事の種類によって名称が変わります。オフィスビルや商業施設をはじめ、建物の建築工事やリフォーム工事を行うときに、包括的な施工管理体制を敷き建築現場を指揮できる資格は、建築施工管理技士です。土木施工管理技士は、道路や橋のような人々の生活に直結するインフラ設備を行う際の土木工事で、工事計画を作成したり建設現場の施工管理体制を取りまとめます。照明設備や電源設備工事を管理できる資格は、電気工事施工管理技士です。工事を実際に行える資格ではありませんが、オフィスビルや施設などの電気工事の施工管理体制を担当します。
管工事施工管理技士は、空調設備やガス配管など配管設備の新設や更新時に、施工管理体制を組み立て管工事の総合的な管理を行います。また、公園や庭園のような造園工事の施工管理体制を担える資格は、造園施工管理技士です。オフィスビル屋上や施設の緑化工事などもマネジメントします。建設機械施工技士は、ブルドーザーなどの建設機械を使用する建築プロジェクトの工程を管理し、建築現場と周囲の安全を守ります。さらに、オフィスビルに欠かせないインターネットや電話回線といった通信設備工事を管理する資格は、電気通信工事施工管理技士です。照明設備や送電設備を扱う電気工事施工管理技士とは異なり、電気通信工事施工管理技士は、通信設備の施工管理体制に特化しています。
◎施工管理技士がマネジメントする施工管理体制の業務

〇工程管理
施工管理技士が担う施工管理体制のひとつは、すでに設定されている工期にあわせて建築プロジェクトを完了させる工程管理です。工期は工事の発注者と受注者の間で取り交わされる契約のため、工期内にプロジェクトが終了しなければ、契約違反になってしまいます。また、施工管理体制が不十分で工期内に納められない場合、期日までに施設をオープンできなかったり、職人の人件費などの追加予算が必要になるなどの問題が起きかねません。不測の事態が発生しても工期内に完了するよう、施工管理技士は施工管理体制において、工程の進捗管理を精密に行い遅延がないよう努めます。建築プロジェクトでは、綿密な施工管理体制を実行していても、天候や建築資材の手配などでトラブルが起きる場合があります。トラブルが発生した際、施工管理技士は作業員の人数や配置、スケジュールを調整して計画を立て直し、工期内に完了できるよう施工管理体制の修正を行います。工程管理では、施工管理技士の建築プロジェクトすべてを見通す力が求められます。
〇設計管理
発注者が定めた設計を遵守して施工しているか管理する設計管理も、施工管理技士が組み立てる施工管理体制のひとつにあげられます。建築プロジェクトでは、発注者が求める建物の仕様、たとえば素材の指定やサイズ、強度や機能性などが、あらかじめ仕様書に細かく記載されています。仕様書通りに工事が進められていない場合、契約に反しているだけではなく、仕様通りになるよう修正する時間とお金が必要です。施工管理技士は施工管理体制のなかで、発注者が設定した設計や品質に合致した施工になっているか、詳細に点検し管理します。仕様に沿って施工されておらず、発注者が希望する品質を満たしていない建築物は、トラブルの元になりやすいため、施工管理体制でも重要なポイントです。また、仕様通りに建築物を完成させるだけでなく、完成後の行政調査で不備を指摘されないためにも、きめ細やかな設計管理が求められます。施工管理体制のひとつ設計管理では、仕様を把握したうえで正確な点検を行う能力が必要です。
〇原価管理
建築プロジェクトの限られた予算内ですべてが完結するよう調整する原価管理も、施工管理技士が担当する施工管理体制のひとつです。予算はあらかじめ設定されているため、予算内で発注者と受注者に相互利益があるようにするには、原価管理による調整が欠かせません。建築資材や人件費が想定より増えていたら、施工計画を見直してコストカットできるポイントを見つけ、施工管理体制の予算の再調整を行います。また、予算内で仕様通りに施行し、発注者を満足させられるパフォーマンスも、施工管理体制のなかで重要です。施工管理技士の職務には、建築現場の管理だけではなく建築プロジェクトの予算管理や書類作成などの、事務作業も多く含まれます。施工管理体制のなかの原価管理では、予算執行やコスト調整など、施工管理技士の金銭的なマネジメント能力が問われます。
〇安全管理
施工管理体制のなかには、建築現場で作業を行うすべての人物が、事故やケガなく無事に建築を終えられるよう指揮する、安全管理もあげられます。工具や重機を用いたり、足場や高所で作業をする建築現場は、事故が起きやすい環境になっています。関係者の安全を確保する管理は、施工管理体制において極めて重要です。施工管理技士は、安全パトロールや朝礼を実施して、事故とケガがない安全な現場作りに努めます。安全パトロールでは、事故が発生し得るリスクとなるものを見つけたり、職人が手順やルールを守って作業をしているか巡視したりして、事故の発生率を低下させます。朝礼では、ヒヤリハットの共有や安全教育を行い、安全意識を高めます。また、ケガや事故のリスクにさらされる対象は、建築現場にいる人だけではありません。施工管理体制のなかでも重要な安全管理は、周囲の住民や現場近くを通行する人に対しても適用されます。
◎施工管理体制が建築プロジェクトで重要とされる理由

建築物を問題なく完成させて引き渡すには、プロジェクトに関わるすべての人を把握する施工管理体制が必要です。建築プロジェクトには、職人以外にも建築資材の購入先や発注者など、立場が違うさまざまな人が関わります。そのような人すべてを把握した施工管理体制により、行き違いや不備が起きないよう管理しなければなりません。施工管理技士は、自分が作った施工管理体制の枠組みのなかで、職人のスケジュールや工期を管理したり、予算に応じた建築資材の商談などを行います。建築プロジェクトに関係するすべての人の管理を実施するためにも、施工管理体制が重要です。また、建築物は建てたら終わりではなく、行政への報告や申請が発生する案件もあり、行政側と複数回関わるケースも考えられます。建築物のみに注力した施工管理体制を組み立ててしまうと、必要な申請作業がおろそかになりかねません。申請内容や書類に不備があり申請を受け付けてもらえない場合は、発注者に迷惑をかけるリスクが伴います。建築物をスケジュール通りに完成させるには、すべての工程を洗い出して管理する施工管理体制が欠かせません。
◎まとめ
施工管理技士が構築する施工管理体制には、幅広い業務が含まれます。工期内にプロジェクトを完了させるための工程管理や、仕様に沿うよう確認する設計管理なども、施工管理体制の業務のひとつです。施工管理体制は、依頼を受けた建物を希望通りに完成させるために欠かせません。施工管理技士がマネジメントする施工管理体制による、ビルや店舗のリノベーションなどについてのお問い合わせは、当社までお気軽にご相談ください。
