コラム
ビルをリノベーションする際に更新が見込まれる設備と更新時のポイント
ビルのリノベーション計画時に、ビル内の設備を同時に更新する案が盛り込まれる事例があります。築年数が経過したビルの設備は、内装や外装と同じく、古くなっていたり十分な機能が確保されていない場合があるからです。ビルリノベーション時に設備を一新すると、ビルの市場価値向上が見込めるため、収益の回復や増加が期待できます。この記事では、ビルをリノベーションする際に更新が見込まれる設備と設備更新時のポイントをご紹介します。
◎ビル1棟をリノベーションするときに設備更新を行う理由
ビル1棟をリノベーションするときに、ビル内の設備更新も計画に含められる理由のひとつは、ビルの市場価値の回復と向上です。設備や見た目が新しく、魅力的で入居する価値があると判断できるビルに、入居希望者は多く集まります。ビルが建ってから長時間経過したビルは、内装や外装をはじめ、見た目でわかる古さ以外にも、目に見えにくい設備の劣化が進んでいます。設備が更新されていないビルは、入居希望者に対して、快適性や安全性で不安を感じさせてしまうため、なかなか選ばれません。入居者に選択されないビルは、収益性に問題が発生し、今後の健全な運営に影響を及ぼします。古くなった設備を内装や外装のリノベーションと同時に更新すると、ビル自体の市場価値を取り戻せるので、継続的な収益性を確保できるでしょう。
ビル設備を更新する案がビルを1棟丸ごとリノベーションする際、計画に盛り込まれる理由には、タイミングもあげられます。ビル1棟のリノベーションと同時にビル設備の更新を実施する方が、費用や時間のスリム化が可能です。ビルの設備更新では、空調設備の総入れ替えや防災設備の一新をはじめ、大掛かりな工事となるケースが複数あります。壁や天井を取り払った内装のリノベーションを行うなら、空調や配管設備をまとめて工事すると、コストも手間も削減できます。入居者が入居した後に、防災設備の更新を実施すると、入居者の行動を遮ったり、邪魔したりするため、入居者の満足度が低下し、苦情のもとにもなるでしょう。入居者ファーストや費用、手間を考慮すると、ビルの多くの設備を更新できるタイミングは限られています。大規模なビルリノベーションを計画する場合は、ビル設備の更新もまとめて行う方が、ビルのオーナーと入居者、両者にとってメリットがあります。
◎リノベーション計画で更新が検討され得るビルの設備
ビルのリノベーションと同時に、更新が検討され得るビルの設備は、空調設備や給排水設備、電気設備などがあります。更新時期を迎えていたり、劣化が進行していたりする場合は、内装や外装のリノベーションと同時に一斉更新するとよいでしょう。
〇エアコンや換気などの空調設備
エアコンや換気扇をはじめ、ビルや居室の空調を調整する設備は、ビルのリノベーション計画と一緒に更新が検討されるビル設備のひとつです。空調設備の耐用年数が超過していたり、耐用年数を迎えていなくても数年内に期限を迎えたりする場合は、入居後の長期的な使用に支障が生じる可能性があります。入居して間もなく居室や共有スペースの空調設備に問題が起きると、入居者は快適にビルを利用できません。快適に利用できないと早期退去にもつながるため、使用年数に応じて、ビルのリノベーション時に更新しましょう。入れ替える際は、単純に安価な製品ではなく、省エネ性能や機能を確かめたうえで、検討するとビルの市場価値向上にも貢献します。
〇給排水設備をはじめとした水周り
給排水の配管や受水槽など、ビルで使用する水に関連する設備更新も、ビルリノベーション計画の一部として取り扱われる工事です。ビルが建ってから年数が経過しており、かつメンテナンスが行き届いていない場合は、給排水管や受水槽、水周りの設備自体の劣化が進んでいるケースがあります。劣化の進行や損傷個所が見られると、階下への水漏れをはじめ、水周りのトラブルが発生し、入居者の居室内にある書類やパソコンなどの物品に被害を与えかねません。共有部、専有部に関わらず、ビルに欠かせない水周りの設備は、使用年数や耐用年数を丁寧に確認したうえで、更新計画を練りましょう。
〇火災や台風などの災害に関する防災設備
ビルを火災や台風などの災害から守る防災設備は、ビル内のあらゆる場所で求められるため、ビル1棟をリノベーションするときに、同時更新が望ましい設備のひとつです。災害から人命を守る役割を防災設備はもっているため、耐用年数や機器の状態に応じて、入れ替えが求められます。自動火災報知機や消火設備、避難誘導設備など、人命に直結する設備の拡充は、入居者の大きな関心事です。入居者がビルに入った後の更新工事は、入居者の負担になります。また、入居した時点から安心と安全の提供は欠かせないため、防災設備のリニューアルは、リノベーション計画に盛り込まれる可能性があります。
〇照明設備や電気容量などの電気設備周り
エントランスや廊下になどに設置される照明設備更新や、ビルの用途に応じた電気容量の変更も、ビルのリノベーション計画に含まれます。とくに、照明がLEDではない場合、電気消費量の削減や省エネ効果を得られないため、コストパフォーマンスが低下します。また、オフィスと飲食店では必要な電気容量が異なるため、ビルの使用用途と既存の電気容量の見直しも重要です。LED化や電気容量の見直し以外にも、人感センサーの配置や時間帯に応じた調光機能など、付加価値を提供して、ビルの市場価値を押し上げる電気設備の更新方法もあります。
〇監視カメラをはじめとした防犯設備
現代の防犯意識とは合致しない防犯設備が残っているビルは、ビルリノベーションと同じタイミングで、防犯設備のリニューアルが必要です。居室内にある物品や情報を守り、入居者の安全を保つ設備は、ビルを利用してもらううえで拡充が欠かせません。入居者にとっても、ビルの防犯・安全対策は、注視するポイントのひとつです。ビルリノベーションと同時に、現代人が満足するレベルの防犯設備を取り入れたビルは、入居者の関心を引き、最終的に選ばれるビルになるでしょう。
◎ビルリノベーション時に設備更新を実施するときのポイント
ビルのリノベーションと同じタイミングで、ビルの設備を更新するときは、既存設備の使用年数と耐用年数を確認してから実施しましょう。築年数が経過したビルでも、過去に設備更新が行われていた場合、更新工事が不要なケースが考えられるからです。ビルの内装や外装のリノベーションにもコストはかかりますが、ビル設備の更新にも高い費用が求められます。耐用年数が残っており、引き続き使用できる設備を無理に入れ替える必要はありません。既存設備を継続利用すると、コストカットにつながります。耐用年数と使用年数を確認したうえで、リニューアル工事の判断が重要です。
防災設備をはじめ、ビル設備のリニューアルを検討する際は、現行の法律にのっとった工事計画の作成が必要です。ビルを稼働させるために法律が求める要件を満たさないと、ビルのオーナーをはじめ、管理し運用する関係者が罰せられる可能性もあります。たとえば、防災に関する法律には、消防設備の設置を定める消防法や、避難器具の記載がある建築基準法などがあります。消防法では、ビルの用途変更や増改築により対応すべき事項が変動するため、細心の注意は欠かせません。入居者の体の安全に直結するため、遵法性を確保したビル設備のリニューアル計画の作成は、ビルリノベーション時に設備更新を行うときのポイントのひとつです。
ビル1棟の内装や外装、設備をリニューアルさせるときは、ビル全体のライフサイクルコストを把握し、修繕計画を事前に作成してから、実行に移します。将来的に必要な維持管理費用を計算し、修繕計画を立てておくと、適切な時期に設備のメンテナンスをスムーズに実施できるため、入居者の満足度を下げません。ビルリノベーションで設備のすべてが入れ替わっても、時間が経過すると修繕や修理が発生するので、事前の計画作成が重要です。また、好みや新しさ、性能ばかりに注目して、その場限りの設備更新を実施すると、賃料が跳ね上がる可能性もあります。短期的から中長期的な目線で、将来に必要なメンテナンスや修繕工事のコストを計算しないと、適切な賃料設定と継続して安定したビル運営ができません。長期的なビル運営と賃料収入を維持するには、賃料に上乗せされるコストを調整したうえで、ビル設備の更新工事とビルリノベーションを実施しましょう。
◎リノベーションと同時にビル設備を更新した当社の施工事例
ビルのリノベーションと同時に電気設備や空調設備など、ビル設備を更新する際は、設備更新のポイントをおさえたうえで実施すると、入居者が関心を寄せるビルになります。
〇東京港区東麻布ビル
港区東麻布にある築年数が経過したビル1棟のフルリノベーション工事に参画しました。このプロジェクトでは、内装や外構工事のほか、電気設備や防災設備、空調設備をはじめ、大規模なビル設備の更新も、当初から計画に含めています。フルリノベーションと同時に設備更新を行うことで、入居後の工事を防ぎます。設備工事のもれが発生しないよう、丁寧に計画を立てました。入居者様が快適かつ安心、安全に入居できるよう設備をリニューアルし、ビルの市場価値の回復と向上を図り、入居者様が大きな魅力を感じられるビルに変身させました。ビル設備のリニューアルとフルリノベーションにより、アパレル系の企業さまがビル1棟すべて利用しています。
◎まとめ
ビルのリノベーションと同時に設備を更新すると、ビルが建ってから時間が経過していても、市場価値の飛躍的な回復が可能です。設備の一新でビル自体の魅力度が高まり、従前より多くの入居希望者の関心を集めるでしょう。ビル設備の更新を行うときのポイントを把握していると、よりアピール力のあるビルに生まれ変わります。ビルリノベーション時に更新が見込まれる設備と設備更新時のポイントにご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。