コラム
美容室の設備設計をする際にチェックすべきポイント
美容室の設備設計をする際にチェックすべきポイント
美容室を開業した際、トラブルなく円滑に顧客対応をするには、美容室内部の設備設計が欠かせません。適切な美容室の設備設計があるからこそ、顧客に満足してもらえるサービスの提供が可能です。美容室のオペレーションに直結する設備は、給排水設備や電気、換気設備をはじめ複数あり、それぞれ設備設計時にチェックするポイントが異なります。この記事では、美容室の設備設計をするときにおさえておきたいポイントをご紹介します。
◎美容室の設備設計を進めるための事前知識
美容室を開業するには、美容室として機能するためにさまざまな設備を導入しますが、自由に設備設計をしてよいわけではありません。美容室の設備設計の諸条件は、美容室を管轄する保健所によって変わります。設備設計の正確な情報は、開業予定の美容室の地域を管轄する保健所のホームページに掲載されています。また、美容室の設備設計の要件は、美容師法や美容師法施行規則、都道府県もしくは政令指定都市や特別区の美容師法施行条例をもとに定められます。
美容室をオープンするには、保健所が美容室に求める設備の正確な設置が必要です。また、設置そのものが義務付けられている設備もあります。設備設計の要件は各保健所により変わりますが、頭髪に関するサービスを提供する美容室は、洗髪設備の設置が不可欠と定める保健所があります。顧客の髪を洗うには、給排水設備が欠かせません。洗髪設備の設置が義務付けられている際は、美容室の必要な設備設計のなかに、給排水設備が含まれます。給排水設備のほかにも、美容室には重要な設備設計があり、たとえば換気設備があげられます。美容室の炭酸ガス濃度は5,000ppm以下を維持することと、美容師法で定めています。炭酸ガス濃度を規定値以下に保つには、ドアを解放して行う定期的な換気以外に、換気設備の充実も非常に効果的といえます。また、炭酸ガス濃度計を設備設計のひとつとしてカウントしておくと、炭酸ガス濃度を視覚的に把握できます。美容師法の基準は5,000ppm以下ですが、保健所によっては、保健衛生の観点から、炭酸ガス濃度を1,000ppm 以下、かつ一酸化炭素濃度は10ppm 以下と記しています。美容室を管轄する保健所の規程に応じて、設備設計の要件は変動するため気をつけなければなりません。
保健所には、美容室の各設備の設置条件である構造設備基準があります。美容室のオープンを検討している方は、設備導入時のポイントとして事前に確認し、把握しておきましょう。また、美容室を開業する際は、保健所の立ち入りを受けます。立ち入り検査では、設備設計が構造設備基準に適合しているか確認します。検査で不備が指摘されると美容室のオープンスケジュールが変わるため、設備設計の要件とあわせて立ち入り検査の詳細情報の取得が必要です。
◎美容室を設備設計するときのチェックポイント
美容室を設備設計するときは、おさえておきたいチェックポイントが複数あります。美容室オープンの可否に関わるポイントのため、あらかじめ理解しておくことが大切です。
〇給排水設備は口径に注目する
給排水設備の口径は、美容室を設備設計するときの重要なチェックポイントです。美容室をオープンしようと考えている物件に走っている水道管が細いと、洗髪時の水圧が足りず、満足できるサービスを提供できないケースがあります。水を使ったサービスを想定していない、一般的な物件の水道管の口径は13mmが多く、細さが理由で美容室が求める十分な水圧を確保できません。美容室の業務として、安心して水圧を維持できる水道管の太さは25mm以上のため、美容室を設備設計するときは物件の水道管口径の確認が必要です。また、顧客が来店した際、同時使用が想定されるシャンプー台の数と、どれほどの水量が同じタイミングで必要かも調査しましょう。
排水設備に着目するなら、物件内部にある大元の排水口の口径確認も必要です。口径が小さい場合、美容室で使用した薬剤や流された髪が原因のつまりが起きやすくなります。美容室なら、排水口の口径は60mmから75mm確保できると安心ですが、物件によっては、50mmの場合もあります。築年数が経過している物件では、排水口の口径が大きくても、入居前に排水設備の洗浄が必要なケースがあるため留意が必要です。また、複数のシャンプー台の水圧維持と同じく、複数のシャンプー台から同時に排水する量の確認も欠かせません。物件にある排水設備が、想定する最大排水量に耐えられるかどうかチェックします。
〇電気総容量は余裕をもった設定にする
美容室の設備設計では、必要な電気量を計算したうえで余裕をもった電気総容量を設定し、電気量が不足しないよう設備設計しましょう。あいまいな計算をしたり、計算そのものをしなかったりすると、美容室開店後の電気容量増加の工事や、火事発生の原因につながります。電気容量の不足は、美容室で接客している最中にブレーカーが落ちるなど、顧客の満足度低下や施術トラブルにも発展します。電気容量不足を回避するには、幹線の引き換えが有効で、求める電気容量の確保が可能です。
また、電気量の肥大をおさえる手段には、美容室の照明設備のLED化があげられます。さらに、ひとつの席に対しドライヤーを1台設置するのではなく、ひとつのドライヤーを2つの席で共有する方法も、電気量を減らせる設備設計です。美容室では水と同様に、ドライヤーやパーマ機器をはじめ、多種多様な設備で電気を使用します。美容室の物件を探すときは、電気総容量の確認と想定する使用電気量の計算は、欠かせないポイントです。美容室オープン後に、設備の拡大や使用する電気量が増える場合は、あらかじめ電気工事業者に相談しましょう。最初から余裕をもった電気総容量を設定しておくと、追加工事によるコスト増加を防げます。
〇ガス設備は種類と容量を確認する
ガス設備は、物件で使用できるガスの種類の確認が先決です。都市ガスなら配管から共有できますが、プロパンガスの場合は、ガスボンベの設置が必要だからです。また、プロパンガスの料金は、供給会社により大きく変動します。プロパンガスを使用する際は、見積もり合わせをしましょう。物件で使用できるガスの種類は、簡単に問い合わせできるため、内見前でも把握できます。使用するガスの種類が判明したら、想定している美容室の設備設計でもガスの供給が十分に確保できるかチェックします。ガス容量が不足した場合、お湯が出るまでに時間がかかったり、サービスの最中にお湯が水になってしまったりします。美容室の入居実績があると安心感が増しますが、設備設計に違いがあることは覚えておきましょう。
〇換気設備は機能面を重視する
換気設備は美容室でも重要な設備のひとつで、設備設計では機能面に着目します。美容室では、カラーリングやパーマをするときに臭いが強い薬剤を使用するため、換気設備が機能しないと顧客満足度に影響を及ぼします。美容室では、飲食店のように煙は出ませんが、臭いが顧客の体調に影響を与えかねないため、換気設備の機能性の注視が必要です。換気はドアを開放してもできますが、美容師法が定める炭酸ガス濃度の基準順守し、適切に美容室を運営するには、機能性と美容室の面積に合致した換気設備を導入しましょう。
◎美容室で提供するサービスにより設備設計が異なるケース
美容室をオープンするときは、基本的に保健所が指定する設備を配置しますが、美容室が提供するサービスの内容に応じて、設備設計は変わります。この美容室でしか体験できないオリジナリティの演出や、美容室を開業する目的によっては、独自のサービスを提供するための設備が必要です。たとえば、ペット同伴で気軽に来られる美容室を設備設計したい場合は、連れてきたペットが美容室内でも快適に過ごせる設備が求められます。
ペットの共有の水飲み場を設置する際は、ペットが飲みやすい位置に給水設備を置けるよう、設備設計しましょう。ペットの足の洗い場を提供する際は、低い位置でも給排水ができるよう、各管を延長した洗い場を設置します。ペット同伴が可能な美容室といっても、ほかの顧客が連れてきたペットの臭いが気になる人もいます。ペット特有の臭いを軽減できる換気設備を設備設計すると、臭いに敏感な顧客も満足できる美容室をデザインできます。
美容室をオープンするためには、特別なサービスや設備設計を予定していなくても、さまざまな設備配置が欠かせません。複数設置が掲げられる設備に加えて、美容室のサービス内容に応じ、追加される設備もあります。独自のサービスを考えている方は、美容室開業後の店舗内部をイメージしつつ、オリジナルのサービスをトラブルなく顧客に提供できる設備設計をしましょう。
◎美容室を設備設計した当社の施工事例
美容室を設備設計するときは、給排水設備や電気総容量の確認をはじめ、スムーズかつトラブルなくオペレーションできるよう設備設計します。
〇東京都中央区美容室
東京都中央区の美容室の移転工事に際し、美容室の設備設計をした事例です。木造2階建ての民家を美容室へ改修するため、美容室として問題なく機能するか細心の注意を払いながら設備設計しました。同時に使用する水量や電気量を綿密に確認し、最大限に使用されたとしても、美容室の営業が停止しないよう計算しました。また、シーリングファンを取り付け室内に気流を作り、換気効率を上昇させています。美容室の設備設計の要件を的確におさえながら、お客さまが心地よく滞在できる空間を作り上げました。
◎まとめ
美容室の設備設計は、美容室として正常に機能し、適切かつ上質なサービスを提供するために行います。顧客が再来店したいと思う美容室を作るには、水圧の弱さや換気の悪さなど、サービスの質が下がる原因を発見し、かつ取り除ける設備設計が重要です。美容室の設備設計は、顧客満足度へダイレクトにつながります。美容室のオープンを検討中で、美容室の設備設計のチェックポイントにご興味がある方は、当社までお気軽にご相談ください。